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上田文人氏の「ゲームでしか体験できないものは何か」と次回作の展望

上田文人氏の「ゲームでしか体験できないものは何か」について

先日、書いたブログ記事でも紹介したが
ICO』や『ワンダと巨像』を手掛けたゲームデザイナーの上田文人さんが

 

「映画やマンガではできない表現を考えて、
自分が体験したいゲームを作りました」

「ゲームでしか体験できないことは何か」

 

という言葉を残している。

『ICO』『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』上田文人氏のゲームに対する考えについて - ぺんぎん村での日々

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ゲームを通して体験する面白さ
それはゲームならではの面白さに起因するものであると思う。
映画、マンガなどではなく、ゲームでしか表現できないものの中に、
それはあるはずだ。

 

 

 

ゲームの面白さは「かけひき」 

 

星のカービィ』『大乱闘スマッシュブラザーズ』などのゲームデザイナーである桜井政博氏が2011年に行った講演の中に、
ゲームならではの面白さを考えるヒントがあると思う。

ゲームの面白さを生み、より高めるための法則とは?──『カービィ』『スマブラ』の生みの親・桜井政博氏による研究の集大成となる講演をWeb上に再現【若ゲのいたり・特別編】

 

この講演のテーマは、「ゲームの本質」

桜井氏が挙げるゲームの面白さの重要な要素の一つとして、


「かけひき」つまり「リスクとリターン」

がある。

 

「リスク」とは、“プレイヤーに対するイヤなことやデメリット、触れるとミスになるような要素”。

「リターン」は、“リスクを排除できたり、先に進めたりするような、プレイヤーにとって利益になること、もしくはそれを得るための過程”である。

 

リスクを冒して、リターンを得る!

これがゲームの本質だ、ということです。
かみ砕いて言えば、リスクを小さくする工夫により、リターンを上手に得ること。

 
例えば、マリオカート
ドリフトが楽しいのは、コントロールを失うリスクとうまく抜けられる快楽が合致するから。

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例えば、スマブラ
攻撃に対する防御、防御に対する投げ、投げに対する攻撃などが挙げられる。

 

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しかし、
「かけひき」だけがゲームの面白さをすべて内包しているわけではない。

 

「かけひき」だけではない

 

「かけひき」以外の面白さを持つゲームのジャンルもある。

 

例えば、操作が楽しいもの

ビデオゲームの中には、操作をしているだけでも楽しいものもある。
モニターの中では、自然の法則から解き放たれた空間を作り出すことができる。
現実世界にはない、不思議かつ魅力的な架空の世界を作り出せる。


操作をするだけで楽しいと思わせるには、
作り手から見てみれば適切な仕様や、
敏感に操作感をくみ取り調整する技術が必要だと述べる。


ノベル・アドベンチャー

これらのゲームは、ストーリーを読み進めることによる面白さがある。
小説や映画などと類似しているが、
話さえ面白ければゲームが成り立つわけではない。

コンピューターを活かしたシステム。
それを活用したシナリオ作りをすること。
それらを積み重ねることで、
ゲームとしてのお話の面白さを生む。

たとえば、クイック・タイム・イベント(QTE)というシステムがある。
これをうまく活用することで、
「成功・失敗による分岐が楽しめる」
というゲームならではの面白さを生み出すことに成功している作品もある。

 

ほかにも、
版権・キャラクター、映像・ストーリー、スポーツ、エディット・クラフト、音ゲーなどが挙げられている。

 

さまざまなゲームの面白さを上げる一方で、
次のような厳しいコメントもしている。

 

総合的な娯楽としてのゲームはまだまだ謎が深く、手法も方法論も、またその面白さも可能性も、多岐にわたると思います。

しかし! 冷静に市場に出ているゲームを見つめてみれば、言ってしまえば既存のジャンルやルールを強化したものが大半です。

ゲームは面白くなければ意味がありませんから、私は他のゲームと全く違うルールを持つことばかりが価値だとは思いません。

ゲーム自体もっともっと可能性があるはずです。

色々な手だてを使って、今後もより新しく面白いゲームができていけばよいなあ、と考えております。

 

『遊びと人間』


一方、講演の中でフランスの哲学者、ロジェ・カイヨワが1958年に書いた
『遊びと人間』を引用して、
ゲームの遊びとしての要素について考察している。

遊びと人間 (講談社学術文庫)

遊びと人間 (講談社学術文庫)

 

 

『遊びと人間』の中では、遊びの定義について述べている。

 

1.自発的であること
自己の喜びと楽しみのために自発的に遊ぶ
強制されては遊びではない

2.制限されている
空間と時間の範囲内に制限されている
スタジアム、チェス盤、グラウンドなど

3.結果が分からない
予想外のことが起こるから面白い
結果が分かってしまえば面白くない

4.非生産的である
何も生み出さない

5.規則がある
規則が遊びの展開を方向づける

6.虚構である
現実ではない
現実世界とは違うものという意識がある

 


その上で、『遊びと人間』では、人間が持つ遊びの要素を4つに分類している。

 

1. アゴン=競争:対戦や勝負事、受験やテーブルゲームなど

 

2. アレア=偶然:ギャンブル、じゃんけん、ダイスで振って決めるのものなど

 

3. ミミクリ=模倣:ごっこ遊びや、演劇、テーブルトークロールプレイングゲームなど

 

4. イリンクス=めまい:ブランコやジェットコースターなど、感覚に訴えるもの

 

 

それを踏まえて、桜井氏は、
「かけひき」という考えが、かなりアゴン的で、すこしアレア的と述べている。
上の要素を組み合わせ方を変えることで、
新たな遊びが見つかるかもしれない。

 

 

上田文人氏の「ゲームでしか体験できないものは何か」について


以上を踏まえて
上田文人氏の

「映画やマンガではできない表現を考えて、自分が体験したいゲームを作りました」
「ゲームでしか体験できないことは何か」

について考えてみる。

 

上田氏は『人喰いの大鷲トリコ』のインタビューの中で次のように語っている。

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【インタビュー】『人喰いの大鷲トリコ』上田文人氏に訊く―世界観は最後に作る | インサイド

架空の世界で架空の生物と触れ合って一緒に冒険をしてほしいという思いがあり、ゲーム的な駆け引きよりも“体験“を重視していました。

 

また、2013年2月15日、エリック・シャイ氏、上田文人氏、水口哲也氏、そしてイラストレーターの寺田克也氏らが対談するトークイベント「ビデオゲーム:今世紀の芸術といえるのだろうか?」の中で次のようにも語っている。

ゲームは芸術か? 『アウターワールド』のエリック・シャイ氏×上田文人氏×水口哲也氏×寺田克也氏という豪華対談をリポート! - ファミ通.com

 

上田氏は、かつてゲームデザイナーとして、ビデオゲームでしかできない表現とは何なのかを悩んでいた時期があったことを明かした。結局、物語を物語るメディアとして、ビデオゲームは臨場感と感情移入度が増す演出手法であると結論づけたそうだ。

プログラムされたルールの中で自動的にそういう絵面になるシステム、デザインが一番やりたいことです。それこそがビデオゲームでしかできない部分でもあるので、それができそうになると作りたいと思うし、自分で遊んでみたいと思いますね。

 

 

以上を踏まえると、
上田氏の言うゲームでしかできない表現とは、


・物語を語るメディアとしては臨場感と感情移入度が増す演出手法
・ゲームのメカニックのもとでのゲームの世界をつくること

なのかなと思う。

 

最後に

 

最後に、「ビデオゲームにこれからも新しい感覚、まったく見たことのないものはまだまだ出てくるか?」という問いに対して、次のように語っている。

 

映画や音楽はツールがほとんど完成している中でも、表現が練りこまれていくことで新しいものが出てくるじゃないですか。ビデオゲームはまだツールも進化しているし、だからこそ開拓余地もあって新鮮だと思うんですが、メディアとしてはまだ未熟だと思うんですよ。それがある程度成熟して、決まった道具の中で、どのような演出をするか、どのようなナラティブ(物語)をやるのか、そこで勝負してみたいですね。

 

上田氏の新作は、『ICO』『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』と同じ規模感を目指して、現在制作が進んでいるそう。
次はどんな面白さを持ったゲームが生み出されるのか期待である。

 

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